ドン・キホーテ・デル・オリエンテ

いろんな意味でテストちう。

たぶん4年ぶりくらいに美容室に行って思ったこと。

 

 きっかけは、2週間前のある日のことだ。

視界の隅に白黒の円環が現れた。仕事に無理矢理一区切りつけようとしていたときだ。

「なんだろう、これ」

ぼやぼやしている間にも、モノクローム・サークルはくるくると回り続け、その勢力を拡大していった。おまけに、気が付けば頭が締め付けられるように痛い。

しかし、仕事柄早退は出来ない。私はそのまま仕事を続け、先輩に断って入社以来最速の定時きっかりでタイムカードを切った。

 

 「疲労と緊張が溜まっているのでは」という、ごく当たり前の結論はさておき、職場の人と話していて、確かに眼精疲労は関係ありそうだなあ、と思い当たった。そこで、頭皮マッサージを思いついたのだ。

 そして同時に思い起こす。

そういえば、美容院というものに最後に行ったのはいつだったっけ?

 

 元来、私は自分の見た目に気を遣わない性質だ。

 そりゃあもちろん、醜女よりは美人の方が良いに決まっているし、纏うなら襤褸より小奇麗なおべべを選ぶ。

 ただ、ずうっと自分の趣味――読書やアニメや美術館巡りや旅行、あとはランニング――を優先させてきた結果、「見た目に気を遣う」ことの優先順位は私の中で最底辺に位置付けられた。

 でも、さすがにまずいんじゃないか、と20代も半ばに至って漸く重い腰を上げ始めた矢先にこの白黒円環。

 ちょうど良い機会だ、これを逃したら次はない、と、何故か炭酸泉のパーマの予約までしたのだった。

 ここまでが2週間前の話。

 

 頭にカーラーをちょこんと載せている姿を鏡の中に見ながら、ぼんやりと思う。

 女がキレイになるには、カネと時間がかかるのね。

 1年に2回それも1000円カットに行くか行かないか、くらいには髪に関心のない私だ。

 ここでじっとしているより、美術館に行きたいなあ、鎌倉の紅葉は見頃だろうか、美味しいものを食べたい、と煩悩がぐるぐる、ぐるぐる。ああ、あの白黒円環はストレスではなく欲望が原因か。

 

 3時間強のサービスを終えて。頭皮マッサージで気分が心なしか軽くなったし、なんだかちょっとだけキレイになった気がする。スタッフの対応も、いつもの13倍は良かった気がして気分が良い。

 

 まあどうせ、パーマという魔法が解けたら全てが元の木阿弥なんだろうけど。